2001 DECEMBER vol.68
吉川 次に大会の運営についてお伺いします。ボランティアについて、欧米と日本とでは概念が違うように思うのですが。
大橋 そうですね。日本でも早急にボランティアの組織を作る必要があると思います。JGAの会員という形を取るのか? 地域のゴルフ組織に登録するのか? 早くスタイルを確立しなければならないと思うのですが、これには非常に経費がかかります。
吉川 あのボランティアたちが着用しているウェアや帽子というのは支給しているのですか?
古賀 はい。ボランティアに参加された人たちにとって、このユニホームを持つことが非常に名誉なことだと思う風潮もあります。交通費については、皆さん個人の負担で来てもらっています。日本オープンは各地を転々とするサーキットトーナメントですので、毎年違った地域でボランティアの組織を作らなければならない。それが難しいというのが現状です。
川田 でも最近になって随分ボランティアが浸透してきたと思いますね。
戸張 現状のボランティアには3つのタイプがあると思います。1つ目は、地域の人たちで組織されるボランティア。この場合は会場から約80キロ圏内の地域の人たちによるもの。次に2つ目は、開催コースから離れていてもゴルフが好きでボランティアに参加したい、自分たちで旅費、宿泊費を払ってでも参加したいという、遠隔地からでも参加する人たちですね。そして、最後は開催コースのメンバーとその家族たち。いずれにしても、年々ボランティアの数は増えています。日本のボランティアたちが、ゴルフトーナメントを支えるという雰囲気がようやく見えてきましたね。
大橋 国体のボランティアたちは、仕組み上、大会が終わったら終わり。しかし皆さん、熱意のある方々ですから、これら国体のボランティアたちを次の大会にも上手く生かしていくということも検討してみたいと思うのですが……。
尾関 昨年、ドイツのベルリンで行われた世界アマ。日本チームについてくれたキャディたちも全員ボランティアだった。その中には大学の教授をしている方もいて、その人がご夫妻で夜のパーティーに出てきて、自腹でホテルのスイートルームに泊まっていると聞いてびっくりしました。
戸張 外国のボランティアと日本を比べてしまうと、まだまだ厳しいものがあります。ハワイアンオープンに出場した日本のあるプロが、自分のキャディをしてくれたボランティアの家に招待されていってみたら、あまりの大豪邸でびっくりしたという話を聞いたことがありますよ。そういう裕福な人が、ボランティアを買って出るということに感心していました。
川田 日本では、これからボランティアの方向性が見えてくると思います。
大橋 全米オープンでは、ホール別に周辺倶楽部のメンバーたちがボランティアとしてマーシャル(ギャラリー整理)を担当していました。倶楽部単位での参加というのも良いアイディアだと思いましたね。
戸張 欧米では、ボランティアたちがウェアや帽子を買うのです。購入して手に入れたことで“私がトーナメントを手伝っている”という意識が生まれる。いわばボランティアみんなにとっての“マイトーナメント”になるわけです。
川田 マスターズで、毎年16番ホールを担当しているボランティアがいる。それがまた、彼にとってのプライドになっているように思います。
戸張 日本ではボランティアというと、“無償で人助けをする”という意味合いで理解されることが多い。ゴルフにおける各トーナメントでのボランティアの意味は、イベントを通じてチャリティに貢献し、トーナメントをサポートしているということです。また、お金に関しても、米国は全く日本とは異なります。ゴルフトーナメントには特別な措置が施され、トーナメントの収入に関しては税をかけない、またはトーナメントのチケットなどを購入した人には税を控除してもらうこともできる。これらの差額がチャリティとなって、地元に利益が還元されるわけです。ボランティアをした人たちも、観戦した人もゴルフトーナメントを通じて一つのチャリティに参加しているということになるのです。
川田 こういうシステムによって、観戦する人にも、ボランティアとして参加する人にも“マイトーナメント”というプライドが芽生えるのだと思います。
吉川 JGAの内部で、ボランティアを専門とする委員会ができてもいいのではと思いますが、ボランティアの受付などはどうなっているのですか?
川田 まだ、それぞれの開催コースが窓口となって募集をかけています。本来ならばJGAが窓口となって受付をするべきだと思います。全英オープンなどは、スコアラーならスコアラーたちのリストがデータ化されていて、開催地によって優先順位がポンと出るようになっています。スコアラー、マーシャルなど、ポジションごとにデータ化されているのです。日本もできるだけ早くこのシステムに近づきたいですね。
尾関 日本でも同様のデータベースができていればいいのですが……。早いうちにと思っているのですが。
古賀 現在は運営会社とコース任せにしていますからね。ボランティア委員会を作らないと、データベースはもちろん、そこまでの組織もできないと思います。
尾関 やはりデータベース化は必要ですね。JGAとしては、こうした運営面はもちろん、競技団体としても全国のプレーヤーたちのハンディキャップなどを含めたデーターベースを整理、管理する必要があると思うのですがね。
戸張 一般のゴルファーたちからの“JGAって何の組織なんですか?”という質問に対しての答えを、日本オープンを通じて発信したい。またその必要性を感じているのですが、現在は不十分といったところですね。


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