2002 OCTOBER vol.71
ジュニア勢の台頭
 出場146人中、69人が10代。ジュニアパワー充満の大会は36ホールのストローク・プレーを経てマッチ・プレー出場を決めた32人の内訳でも高校生が14人、中学生は5人と半数を越えた。2000年にマッチ・プレー方式を取り入れて以来、ジュニア勢の台頭は年々すさまじい勢いだが、今大会ほど若さがはじけたことは過去になかった。

 第3日目、ベスト8は史上初めてすべて10代が占め、ヒートアップしたのだ。沖縄出身の上原、諸見里、さらには宮里藍も加えた3人は“沖縄3強娘”と周囲を浮かれさせた。若さに加え日本最南端県の活躍は社会現象にまで話題が及んだ。環境が人を育てるといった論調だった。12歳最年少、金田久美子がベスト8まで勝ち上がり、10月の日本女子オープンの出場資格を得て「狙っていたとおり」と、ひょうひょうといったのもすごかった。
若さを支える闘争心
 大会を取材していて感じたことがある。選手たちの闘争心の強さである。それは旺盛なゴルフへの意欲と受け取れた。見る者を引き込み、りりしさ、潔さが見えた。これらはベテラン、若手がどうということではない。もはや日本女子アマチュア界全体、出場選手全体に勢いがついたような感じなのだ。とりわけ今回は若者が、柔軟で、大きく、けれんみがなくおおらかで美しかった。

 若者は美しくなければならない。基準値としてはプレーヤーの勝利へのどん欲さであろう。強くなろう、うまくなりたい、そんな意欲が見えたとき「いい選手だなあ」とうれしくなるものだ。

 圧倒的に多い敗者たちは涙をロッカールームで溢れさせ、気持ちの整理をつけたあと水を頭からかぶりインタビューに現れるのだった。反省やら悔いのあと、決まって収穫があったことを晴れ晴れと語った。彼らの言葉が口先の出任せでないことは連日の行動を見ていればわかった。

 ホテルの午後10時近いロビーといえば人影もまばらである。そんな中、キャディーバッグを肩に5人、6人と選手たちが帰ってくる。試合が終わったあと食事をとり、そのまま練習場で打ち込んでいるという。「大会のときはいつもやっています」「あら、毎日だわ」「ゴルフ、うまくなりたいもん」、選手達とそんな会話を交わした。

 もはや練習は日常生活の一部と化しているのだ。「子供は早く寝なさい」……。そんなばかをいうと時代遅れになる。選手に闘争心が芽生えたいま、大人も寝てなどいられない。なにしろこれはいい兆候なのだ。やる気に水を差してはいけません。
背景には世界がある
 宮里藍は準決勝で敗退したあと「次の目標は世界ジュニア、そしてアマチュアなのでアジア競技大会、世界女子アマチュアゴルフチーム選手権を優先したい」といった。10月の日本女子オープンこそ次なる目標、と決めつけたがる周辺に世界との接点での自分をはっきりと印象づける。「アマチュアなので……」と口にできるあたりがしたたかな闘う心の現れと見る。

 いまゴルフは世界規模で動くことを、宮里らトッププレーヤーはよく知っているのだ。隣国の韓国はナショナルチームを目標とする大会に向け2チームに分けて強化する。Aチームはアジア競技大会、Bチームは世界女子アマチュアゴルフチーム選手権。現在、USLPGAツアーで活躍している朴セリはBチームで育ち、今がある。台湾はアジア競技大会の金メダリストに1000万円の賞金を用意している。金銭のバックアップは不可欠で、実業界、スポーツ界一体となっての年間強化プログラムはあらゆる方向から行われていく。

 優勝した上原は「11歳でゴルフをはじめ、試合で悔しさを知り、1日1000球を毎日打つことに決め休まず練習してゴルフの楽しさを知った。それは闘う楽しさですね」といった。

 驚くべき事実がここにある。上原はトライアスロンをやり25キロのランニングをやりパワーアップのウエートトレーニングもやる。自分のゴルフのレベルアップのため、にである。

 「これまでいろいろな人にお世話になった。恩返しに今度は感動を与えるゴルファーになりたい」
闘う若者の美しさが際立つ背景である。


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