2004 MAY vol.75
 
日本学生ゴルフ選手権競技、日本女子学生ゴルフ選手権競技
今年の学生ゴルフ界  福島 靖(JGA広報委員会参与)
【実施概要】
第58回日本学生ゴルフ選手権競技
開催日/2004年8月24日(火)〜27日(金)
第41回日本女子学生ゴルフ選手権競技
開催日/2004年8月25日(火)〜27日(金)
開催コース/ABCゴルフ倶楽部(兵庫県加東郡)
宮里、甲斐に代わる話題の主
東北福祉大学・池田勇太
 学生ゴルフ界において男子最大のトピックは、なんといってもジュニアナンバーワンの池田勇太(千葉学芸高出身)が東北福祉大に入ったことであろう。並の新人の加入ではない。怪童の加入によって東北福祉大の大学ナンバーワンの地位はますます堅固だが、同時に高校界のナンバーワンが果たして学生選手権、日本アマ選手権にどう挑むのだろうか。彼の一打、一打にゴルフ界の目が集まる。池田は日本ジュニア選手権(15歳〜17歳の部)に2年連続で圧勝した。体力があり、ゴルフのセンスは抜群だ。昨年は日本オープンゴルフ選手権(日光CC)のローアマチュアに輝いてプロを凌ぐ人気者になった。昨シーズン初めには世界ジュニア選手権(米国)に出た。ここでも抜きんでた実力を発揮して個人優勝をとげた。高校生離れした実力者であることはつとに知られ、伸び盛りの真っ只中で大学へ進学。新人とはいえ、即戦力という存在だ。『ジュニアから脱却したゴルフをやりたい』と抱負を語っているが、今度は大学ナンバーワンを目指して一味違った大人のゴルフを見せてくれるか。戦前の原田盛治(東京大学)や久保田瑞穂(明治大学)、中部銀次郎(甲南大学)のようにアマチュアゴルフ界において心技体三拍子そろった寵児になり得るか。
中島徹(早稲田大学)はさらに新風を吹き込むか
藤島晴雄が念願の
日本タイトル奪取なるか
 だが、この大型新人に真っ向から挑戦するような存在が早稲田大勢である。エースの中島徹(駿台甲府高出身)は昨年、日本学生選手権で優勝した甲斐慎太郎に食い下がって注目された。そのシャープなゴルフに新鮮味があった。実姉の真弓さん(現在はプロ)は平成9年、日本女子学生選手権のタイトルを手中にしている。早稲田が中島にかける期待は大きい。悲願である日本学生のタイトル獲得に中島は最短距離に立つゴルファーであるからだろう。早稲田大学にはもう一つ嬉しいニュースがある。ジュニア界のホープ斎藤麗(駿台甲府高出身)が加入した。斎藤は一昨年、全国高等学校ゴルフ選手権(那須野ケ原)の優勝者で、昨年はフジサンケイジュニアゴルフ選手権(烏山城)にも勝ったホープだ。
 これらの新人以外に、大学ナンバーワンの東北福祉大には藤島晴雄、権奇澤(ごん・きてく)がいる。藤島は昨年、関東学生ゴルフ選手権に勝って待望のタイトルに手が届いた。権は東北ナンバーワンといわれる強豪だ。中部地区には上井邦浩(名古屋商大学)という侮れぬ実力者がいる。昨年は日本学生選手権で単独2位。甲斐、中島、上井の三つ巴で優勝争いが演じられたのは記憶に新しい。強豪がひしめく男子は、例年以上の激戦が予想される。
女子は香山、恒川、平野の実力者がひしめく
昨年度チャンピオンの香山麻央
 女子学生界のトップレベルにあるのは香山麻央(立命館大学)、恒川智会(同志社大学)、平野希(東北福祉大学)の三人だ。いずれもショートゲームの技術に優れ、スコアのまとめがうまい。この三者は実力伯仲で横一線、いずれもが日本学生選手権の常連である。経験面から占ってみると頭一つ先行しているのが恒川だろう。彼女は一昨年、日本学生選手権(三好CC)で勝機を掴みながら、最終ラウンド16番のミスが致命傷になり競り合っていた古屋京子(現プロ)に優勝をさらわれた。しかしながら、多くの国際競技の経験を積んでいるのが強みで、今年こそ待望の優勝に手が届くか。恒川の同僚、山岸優子も力をつけて注目される存在だ。昨年は日本学生で3位タイ。スケールの大きいゴルフで今年は飛躍の年にしたいところだろう。
人材豊富な東北福祉大勢
 男子同様の実力校、東北福祉大の女子にはジュニアで活躍してきた二宮歌奈子、和田委世子、佐伯三貴というパワーゴルフの申し子が集まった。和田は宮里藍を慕って東北高校に進み、東北福祉大の門を叩いた。東北高では宮里の存在に刺激されながら研鑚を積み一昨年、東北女子アマ、同ジュニア各選手権に勝った。同年、日本女子アマ(千葉・オークヒルズCC)ではメダリストになりベスト32入りを果たして話題になった。
 佐伯は163cm、60kgの恵まれた体格にものをいわせ高校時代から日本女子アマで活躍してきたが、ドライバーの飛距離は男性も真っ青というロングヒッターだ。
 二宮の両親は専修大学ゴルフ部で活躍してきた、四国のゴルフ界を代表するゴルファーである。兄の慎堂も同じ大学で学んでいる。母の薫さんは5年前の日本女子ミッドアマのチャンピオンという環境のもとで育っている。
 このほか東北福祉大には学生ゴルフ第一線クラスの実力者、平野希、山本知佳が顔をそろえている。昨年まで現役で活躍してきた桜井裕華が今季からコーチに就任した。部員、コーチングスタッフの充実は他校を凌ぐ。山本は昨年の日本学生選手権で5位タイ。最近、女子のジュニアで活躍した多くの逸材は、大学進学を敬遠する傾向が強い。だが、学生ゴルフ界は毎年、大学独自の努力で地道ながら男女ともいい素材を輩出しているのは特筆されるべきだろう。
日本学生ゴルフ選手権の舞台ABCゴルフ倶楽部
 コースの開場は昭和60年10月1日。18ホール。これまでにプロのトーナメント『ABCチャンピオンシップ』や『ラークカップ』『フィリップモリスチャンピオンシップ』『日本女子プロ選手権』といった馴染み深い競技がここで開催された。高低差17mと比較的平らな地形を利用して造られたコースだが、全長は7,140ヤードもあり、距離の長いコースだ。今年は念願のグリーンの改修工事を完成させ、一面グリーンが実現する。終盤の3ホールは“テレビ中継を想定して設計した”といわれるだけあり池を囲むように配列されている3ホールの景観がいい。
 コースの設計は鈴木正一、佐藤健の両氏。佐藤氏は日本アマに4度優勝した名手、佐藤儀一さんのご子息で、長年、佐藤さんの助手を務めてきた。
 


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