2002 OCTOBER vol.71

日本アマチュアゴルフ選手権競技の予選ラウンドをトップで通過した選手に与えられる称号——。それが「メダリスト」だ。古くから使われてきた言葉だが、この言葉の起源を皆さんはご存じだろうか? ここで「メダリスト」の意味を再確認し、日本アマと「メダリスト」の不思議なジンクスを紹介する。
メダルとゴルフの接点とは?
 今年10月。韓国でアジア競技大会が開催された。さらに2年後にはギリシャのアテネでオリンピック大会。こうしたスポーツイベントがあると、どこの国のマスコミも「メダル獲得数」に強い興味を示す。
 金メダル(優勝)が何個、銀(2位)、銅(3位)を合わせて、メダリストが何人になったなどと、ゲームの内容よりもメダルの数の方に関心を寄せる。

 こうした総合競技大会では、優勝者にトロフィーを渡す習慣はなく、成績上位者の表彰はメダルを首にかけることで示し、順位はメダルの色で区別している。

 ところで、ゴルフでもトーナメントの優勝者には、現在はトロフィーが贈られるのが常識だが、ゴルフの競技会でトロフィーが見られるようになったのは1872年の第12回全英オープン。第1回から優勝者にはチャンピオンベルトが贈られ、3年連続優勝したプレーヤーには「取り切り」の特典がつけられていた。そしてトム・モリス・ジュニアが68年から3連勝し、ベルトを取り切ってしまったため、71年は競技が開催されず、72年に改めてセント・アンドリュースなど3クラブが費用を出し合って新しくトロフィーを作ったのが、ゴルフにトロフィーが使われた最初であり、それまでは前述のベルトやメダルが優勝者に贈られていたようだ。

 古書によると1806年、スコットランドのウィリアム4世が、セント・アンドリュースのクラブの秋のコンペティションの優勝者に金製のメダルを下賜したのが、ゴルフ競技会とメダルの関係が生まれた最初のものだといわれている。
 
「メダリスト」のジンクス
 それならゴルフ競技の優勝者をメダリストと称するかというと、実は違う。
 ゴルフにおけるメダリストとは、参加者全員がハンディキャップを用いず、スクラッチで行われる競技会で、しかも予選ラウンドはストローク・プレー方式。決勝ラウンドがマッチ・プレーで行われる選手権で、その予選のストローク・プレーで最も少ないスコアでホールアウトし、決勝ラウンドに進出したプレーヤーに対し、メダルを与えて表彰することから、この「予選ラウンド第1位の者」をメダリストと称することになっている。

 従ってアンダー・ハンディキャップの競技とか、マッチ・プレーだけの競技の上位者、さらには複数日にわたる競技で前半の1位の者などに時としてメダリストと称していることがしばしば見受けられるが、それはゴルフ用語の誤った使い方といわなくてはならない。

 ちなみに「日本アマチュアゴルフ選手権競技」の95年に及ぶ歴史の中でメダリストと優勝の双方の栄誉を獲得したのは1929年(昭和4年)のF・H・I・ブラウン(アメリカ)をはじめ、33年、34年の鍋島直泰、36、37、38、41年の佐藤儀一、53年の三好徳行、62年の中部銀次郎の5人だけ。圧倒的な存在感を持った本年のメダリスト、宮里優作も本年ベスト4で涙をのんだ。プレー形式が変わることで集中力、戦略にも影響が出てくるためで、古来よくいわれてきた「メダリストは優勝できない」という意味も理解できようというものだ。


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