2004 MAY vol.75
ケーススタディ1 〜ハイランドセンター〜
「練習場」からの脱却 内藤 裕義 代表取締役社長
ハイランドセンター代表取締役社長の内藤裕義氏
 東京都杉並区高井戸。閑静な住宅地を歩いていると、突如ぽっかりと広大な緑の敷地が現れる。ゴルフ練習場「ハイランドセンター」と隣接されている7ホールの「東京ゴルフ専門学校」の教場だ。
 1964年に開場したハイランドセンターは、今年40周年の記念すべき年を迎えた。長い年月を経て周囲の風景や練習場の設備はすっかり変わってしまったが、ハイランドセンターの「地域密着」の姿勢は40年前当時とちっとも変わっていない。
 内藤裕義氏は「安らぎも感動も得られるゴルフはスポーツの理想です。私自身ゴルフに育てられた人間ですから要は一人でも多くの人にゴルフの魅力を知ってもらいたいだけなんです」とやさしく笑みを浮かべる。
 取材に訪れた日は平日の午前中だったにも関わらず、1階、2階の約80打席はほぼ満席。しかも、そのほとんどが女性ゴルファーだったことにも驚かされた。ハイランドセンターが地域の人々に愛される理由、それはゴルフを通して地域住民とコミュニケーションを繰り返してきたからにほかならない。
 「我々の仕事は単に練習のスペースを提供するのではなく、ゴルフとその特性(自然との融和・審判不在・生涯学習スポーツ)を伝えること。ハイランドセンターを『練習場』ではなく『良き師・良き友・良きライバルが集うゴルファーズセンター』と位置付けております。もちろん、技術の向上も大切ですが、やはり正しくゴルフライフを身につけてもらうことが大切。正しいゴルフじゃないと楽しくない」と内藤氏は語る。
 そのため一般的なスクールのほか、初心者に向けたカルチャースクールを設けている。ラウンドに必要なゴルファーとしての基本は、このカルチャースクールで覚えることができるわけだ。もちろん、さらなる上達を目指す人のためにも様々な教室が用意されている。それらの教室は年齢や技術レベルを考慮して細分化されており、その数なんと1週間で計98教室、受講者はジュニア116名を含め1173名にも及ぶ。

連日の満席は地元地域とのコミュニケーションの賜物
 特筆すべきは1976年当時から毎年チャリティーバザーを開催していること。ゴルフスクールの受講者がレッスン前後に制作した手作り品や個人的に寄付されたゴルフ用品や日用品、協賛業者からの提供品を販売し、その収益を車椅子基金や杉並区の社会福祉基金として寄付している。今年も1,878点の出品があり、100万円を寄付。29年間で計2316万6772円をチャリティすることができた。
 こうした事業も、ハイランドセンターが地元の主婦層から愛される理由のひとつとなっているに違いない。
 「1995年頃までは打席数を多くして、設備を充実させれば黙っていてもお客さんが入りましたが、今は違います。ゴルフ練習場はゴルフの腕を磨くところから、人に好かれるゴルファーを育てるところに変わるべきだと思います」。
 内藤氏の考えが間違っていないことは、連日満席の打席が証明している。


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