Golf Journal Back Number
2005 DECEMBER vol.78

ノムラカップを初めて見て〜ノムラカップ印象記
武藤一彦(広報参与)

オーストラリアの強さの秘密

 豪州の強さが際立った大会だった。個人戦も勝った韓国系オーストラリア人のWon Joon Leeは19歳、チームでは新参者で団体戦の中、足をひっぱるか、つつがなく乗り切れるかが注目だった。それが大会がはじまるとその周辺には驚異の目が集まった。目を見張るドライバーショット、ショートアプローチ、パットの巧みさが見るものを魅了した。1番、やや打ち上げのタフなスタートホールで残り40ヤードまで必ず打っていった。距離は400ヤードをゆうに越え、ヤーデージ以上にタフなホールを普通のホールにしてしまうパワーに驚かされた。そのドライバーショットは、コースの設計者で今大会のチャンピオンシップディレクターの川田太三氏をして「ボールがいつまでたっても落ちてこない」といわせた。そう、アーニー・エルスのようにゆったりとしたスイング、回転の良いボールは風の中でも重量感いっぱい、なかなか落ちてこなかった。
  豪州チームのすごさは、このWonだけでない。エースのMichael Simらは背筋がまっすぐ伸び、視線はゆれなかった。「チームを優勝させることを最優先にしたゲームプランに徹したい」(Sim)と我を捨て、チームに徹した。強引なプレーを極力おさえ、フェアウェーを捉え、地道にスコアを作った。競技は4人のうち3人のベストスコア合計の争いだ。世界的なキャリアを踏んだ選手こそチームを支える力となる。一方、国際競技、団体戦を意識したゴルフこそ実はむずかしい。自分のことだけでなく周辺をも配慮するプレッシャー。実はWonにはこうした背景のもと、「お前ははじめてなのだから思い切りやれ、後はまかせろ」と言ってあった。ゴルフの、さらに奥深いところ、豪州の強さ、迫力の秘密だろう。そして、将来、彼らの中からプロとなりメジャーで優劣を競う選手が必ずでてくる、そのときの準備がすでに実践にうつされている。

“チームジャパン”が抱える問題点

 日本は開催国のアドバンテージを生かせなかった。関係者の話をまとめると、連戦の疲れ、選手層の薄さがクローズアップされた。30年ぶりの大会だったが、日本選手にはそのシーズンの中でピークにする大会が目白押しなのである、というのがひとつ。代表選手たちは大学選手権、トピーカップ、国体と大会前に気持ちを入れた大会を次々とこなすことで疲れ果てていた。池田勇太、額賀辰徳は「ゴルフを始めて以来、初めて悩んだパットの不調」を訴えていた。“開催国、なんとかしなくては…”の重圧がチームを重苦しくし、肝心のパッティングに不調をきたしては苦戦も仕方なかった。原因が疲れとはっきりしている。ピークを目標の大会にあわせることの困難さを知った。次回、繰り返してはならないことだろう。
  選手層が厚ければ選手のコンデショニングも考慮した選考ができた、という点も日本ゴルフ界が改めて議論するべきことかもしれない。選手数や選手育成の問題ではなく内容の問題をふくんでいる。浅川辰彦キャプテンは「各国とも選手層が厚くなった。国別対抗は層が薄くても2人までの争いなら何とかなっても4人をそろえるとなるときびしい。日本はチーム作りを意識してタフな選手を揃えたい。今後は一人で海外遠征に出場させることなどもやっていく必要があるかもしれない」と語った。豪州だけでなくニュージーランド、韓国は独自の強化、選考をしている。日本独自のやり方の、さらなるアイデアと実践は急務であろう。

アマチュア競技を発展させるためには

アマチュア競技の普及には地道な活動が不可欠
 16の国と地域が参加した国際競技。いまだ国内はサンドコースが主流のバーレーンなどの参加は初々しく楽しかった。世界へのゴルフの広がりは世界アマチュアチーム選手権を頂点に近い将来はオリンピックまで広がってくるだろう。世界各国はそうした中、世界タイトルをめざして懸命に立ち向かっていることを今回、強く感じた。同時にアマチュア競技へのゴルファーたちの興味の薄さはどうだろう。大会への観客動員、選手、協賛企業へのバックアップなど地道な活動を大会自体からもっと発散、発展させるのは大切なことだ。競技会への観客動員など関係者は徹底して取り組みたいと感じた。


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