揺るぎない優勝だった。ツアー２勝目を日本女子オープンという最高峰のタイトルで飾った原英莉花。４打差をつけて迎えた最終ラウンドも「ストローク差を有利と考えると、相手のプレーを気にしてしまいそう。それより、もっと攻めて、スコアを伸ばそうって、そう考えていました」意識していたのは、コースとの戦い、スコアとの戦い、自分との戦いであった。その、どれにも勝ち切った。最終ラウンドもドライバーショットは安定していた。前半では、すべてフェアウェイをとらえた。原が２バーディ・１ボギー、小祝は３バーディ・２ボギー。ともに１ストローク伸ばして最終ラウンドのバックナインに向かう。
展開は、両選手の一騎打ちとなった
。こうなると、直接対決している小祝のプレーにも目が向くようになる。11番ホール、小祝が第２打をピンそば50センチにつけた。それを見た原が80センチほどにつけ返す。続く12 番（パー５）では原が、ほぼ２オンさせる。小祝はカラーからの７メートルのバーディパットを決めて、ファーストパットを寄せきれなかった原にプレッシャーをかける。その中で原は２メートルほどのバーディパットを入れ返してみせた。
このあたりのプレーを振り返って、原はこんなことを言っていた。
「緊張はありましたけど、なんか“戦っているなぁ”という感じで、その戦いが楽しかったです」
そして、優勝への決め手になったシーンが訪れる。13番（パー３）である。５番アイアンでピンを狙ったショットがグリーン左にこぼれてラフに寄りかかるように止まった。ここからのアプローチショットをチップインさせての３連続バーディであった。
18番でウィニングパットを沈めたときには「自分のゴルフをやり切った。戦い抜いた」という満足感と、達成感に包まれていた。尾崎に言われたことがある。
「目標ができたら、達成するためには“焦らずに急げ”。それが大事なことなんだ」と。聞いたときには、何のことかわからなかったという。「でも、今は、どういうことだったのか、はっきりとわかります」。
アマチュア時代から数えると、これが６度目の日本女子オープン出場になる。ジュニア時代、そしてプロ入り後に感じていたことがある。「この大会で優勝したいけど、どれだけ自分を成長させていけるのか。奈紗ちゃん（畑岡）は、すごい。自分は、いつか、あそこにいけるのだろうか」
できることからやっていく。体力強化して、スウィング作りをして、ショット精度を高め、ショートゲームを覚え、磨く。やることがありすぎる。でも、ひとつひとつクリアしていくしかない。「そうやって、自分のゴルフを高めていくことを続けていたら、戦えるレベルにまで成長できた。遠すぎると感じると、焦ってしまうと思うんです。ひたすらゴルフに取り組んでいたら、焦る間もなく、ここまで来られたとも思います。きっと、正しい努力ができていたんじゃないでしょうか。もちろん、自分だけでやってこられたわけじゃなく、ジャンボさんはじめ、いろいろな人からアドバイスされたり、教えていただいたり、支えられてのことなんですけど、目標にしていた女子オープン優勝にたどり着けました」
本選手権で、原は、はっきりと自分のゴルフスタイルを確立した。「攻めるゴルフ。それは、自分にとって楽しいゴルフなんだとわかりました。攻めながら、コースマネジメントも考える。いってはいけないところを頭の中に入れながら、そこにはいかせないショットで攻めていく。日本女子オープンでは、つまらないミスジャッジでスコアを崩すようなことはありませんでした。そこに自分で成長を感じますし、これからも、こういうゴルフを続けていきたいと思っています」
このタイトル獲得で、複数年シードが与えられる。新たな夢はUSLPGAツアーへの挑戦だ。「すぐにというわけではありませんけど、どういう形で進むべき道を選択するか。考えてみます。うれしい悩みです」
黄金世代から、またひとり世界を舞台に活躍を広げようとする選手が現れた。
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