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+ 【2015年度(第100回)日本アマチュアゴルフ選手権 プレイバック③】
[2020/08/18]
兵庫県三木市の廣野ゴルフ倶楽部が舞台となった「2015年度(第100回)日本アマチュアゴルフ選手権の決勝戦。この年の男子アマチュアゴルファー日本一を決するのは、ともに10代の新鋭、金谷拓実と中島啓太のマッチアップとなりました。後編は、体力と精神力の限界を感じながら戦い抜いた決勝戦の模様を振り返り、本選手権終了後に世界に飛躍していく2人の姿を追います。

第100回大会日本アマチュアゴルフ選手権決勝戦は、台風9号が接近するなかで定刻7時にティーオフした。気まぐれにコースを吹き抜ける風は、木々の枝を揺らし、不気味に波のような音を立て、金谷と中島の36ホール・マッチプレーの戦いが一筋縄では終わら
ないことを予見させる。決勝戦特有の緊張感が周囲の空気を引き締める中、若い2人は普段と変わらぬ表情でティーショットを放っていった。お互いここにたどり着くまでに熱戦を繰り広げてきた。
5日間連続のラウンドは体力を奪い、目の前の対戦相手との神経戦は精神力を剥いでいく。そして、廣野ゴルフ倶楽部という難コースがプレッシャーをかけ続ける。たとえ10代の選手といえども、その疲労は隠せるものではない。実際、これまでのスウィングのキレを失ったのは、中島だった。1番のティーショットを左バンカーに打ち込みパーに終わったのに対して、金谷はバーディ発進。続く2、4番も金谷が獲り3upと差を広げる。5番で中島が初めてホールを獲ったが直後の6番を金谷が奪い、中島との差を詰めさせない。8番を中島が獲ったものの、9ホールを終えて金谷が2up。金谷がキーポイントとしてあげた10番ホール。中島が2打目を2メートルにつけたのに対して、金谷は8メートル。得意のパッティングでこれを沈めた金谷が先手を取ると、中島のバーディパットは惜しくも外れ、3upに差を広げる。これで勢いづいた金谷は11、13番を獲ると、16番から3ホール連続奪取で、前半の18ホールを終えて金谷の8upと誰も予想しなかった大差がついた。「決勝だからといって、変な緊張はなかったと思います。でも、自分のゴルフが組み立てられなかった」中島は連戦による身体と気持ちの疲れを払拭することができずにいた。

後半の18ホール。この日2度目の1番(パー5)で一矢を報いたい中島だが、金谷が強いアゲインストの風をものともせず、240ヤードを3番ウッドで2メートルに2オンし、イーグルを奪取。中島の出鼻を挫くとともに、金谷自身にも「これでなんとかなるかな」と、ほのかに勝利を感じさせるホールとなった。それが油断につながったのか、通算21ホール目の3番を中島が奪うも、続く4番を「1ホール獲られて、すぐに気を引き締め直した」金谷が取り返し、9upと差を詰めさせない。
結局、通算27ホール目となる10番も金谷が獲り、10and9で金谷が大会史上最年少記録を更新する初優勝を決めた。10番ホールのグリーンでお互いの健闘を称え合い握手を交わした2人。中島が悔し涙を隠せず、嗚咽を漏らす。金谷も激闘を戦い抜いた安堵感と、応援に駆けつけてくれた母への感謝から、表彰式で涙を見せた。
第100回日本アマチュアゴルフ選手権は、3位決定戦で坂本雄介に3and1で勝利した石徳俊樹、決勝戦で死力を出し尽くした2人の清廉な涙と新たな記録を残して閉幕した。そして、この大会は、終生ライバルとして切磋琢磨し合う2人の類まれな才能が邂逅した場となった。

金谷と中島は2015年からナショナルチームU-17メンバーとして選考。ともに日本代表を目指して強化トレーニングに取り組んでいた。先に日本代表デビューを果たしたのは、金谷。日本アマを制した年の秋、アラブ首長国連邦で開催されたノムラカップアジア太平洋アマチュアゴルフチーム選手権のメンバーに抜擢された。果たしてノムラカップは、日本代表が26年ぶり9回目のチーム優勝。快挙に喜ぶ日本チームの輪の中で、満面の笑みを浮かべる金谷の姿があった。その後、金谷は高校卒業の2016年にクオリファイングトーナメントを受験。プロ転向を目指したが、思いは叶わず、東北福祉大学に進学した。
日本アマ優勝から2年間、金谷は自身が成長するために何が必要なのかを考えていた。その時に飛び込んできたのが、女子ナショナルチームメンバーの畑岡奈紗の日本女子オープンアマチュア優勝の快挙だった。「畑岡さんは、ガレス・ジョーンズヘッドコーチの指導を100%信じて、実践していた。それが結果に結びつく様を見て、自分もジョーンズヘッドコーチの教えを全て受け入れよう」それが答えになるかはわからなかったが、それから金谷はより一層ナショナルチームの強化トレーニングに積極的に取り組み、コースマネジメント、語学などを砂漠に巻いた水のように吸収していく。そして、国内では2017年日本オープンゴルフ選手権で池田勇太と優勝争いを演じて総合2位入賞でローアマチュアを獲得、日本代表としてはネイバーズトロフィーチーム選手権優勝、世界アマチュアゴルフチーム選手権個人戦2位入賞という輝かしい成績を残し、2018年アジアパシフィックアマチュア選手権で松山英樹以来2人目の日本選手優勝、マスターズトーナメントと全英オープンに出場を果たす。2019年には日本プロゴルフツアーで3人目のアマチュア優勝の快挙を達成し、世界アマチュアゴルフランキングで1位を獲得するなど、名実ともに国内トップアマチュアへブレイクスルーを果たした。

一方の中島も、ガレス・ジョーンズヘッドコーチの薫陶を受け、その才能が花開く。2015年の中学3年生当時は線の細さが目立った身体も、高校、大学進学と歳を重ねる毎にアスリート化し、持ち前のインテリジェンスさは、洗練されていく。高校3年の2018年にはオーストラリアンアマチュア選手権で日本選手初優勝、アジア競技大会では個人戦で金メダルを獲得し、日本男子チーム5大会ぶりの金メダルに貢献。2019年には個人派遣で積極的に海外のアマチュア選手権に出場して、国際経験を積んでいる。
2019年4月。中島は日本代表として出場しているネイバーズトロフィーチーム選手権のホテルの自室で、金谷がマスターズトーナメントの最終ラウンドをプレーする姿を、食い入るように見つめていた。男子チームの大会3連覇、女子チームの逆転をかけた大会最終日の朝食会場で、中島はチームメイトに、「金谷先輩のプレーは、みんなもテレビで見たと思う。僕らも日本代表としてこの場にいることを誇りに思って、金谷先輩のように最後まで諦めず、気を抜かずにプレーしよう」とメンバーを鼓舞した。金谷と中島は、日本代表として寝食をともにすることも多い。その時間の中で、良い先輩後輩として、またライバルとして、お互いを認めあっているのが垣間見えた場面だった。
金谷拓実と中島啓太。2人は、日本というフィールドでは収まりきらない可能性を感じさせる。そして自身も日本代表として海外を飛び回る中で、厳しいフィールドに憧れを抱いている。近い将来、金谷はプロフェッショナルに歩みを進めていく。そして、中島も金谷の背中を追いかけ、厳しい世界に飛び込んでいくだろう。
その2人が見つめる未来は、海の向こうに広がる世界だ。

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