2000 DECEMBER vol.64
 大会3日目。「今日はグリーン周り、バンカー周りのラフを徹底的にやってくれよ!」。グリーンを確認した在原さんはラフの芝起しに対して、これまでとは違ったポイントに指示を出した。
 それは、昨日の夕方。3日目のホールの位置を確認した在原さんは、2日間の難易度をはるかに上回るものと感じたのだ。確かに、JGA競技委員会によって決められるホールの位置は、4日間18ホールとも平等の難易度に決定される。特に厳しくする日はない。だが、長年鷹之台を見続けてきた在原さんの目には違って見えた。

 だから、在原さんは昨日より硬くなったグリーンを確認すると同時に、この日の芝起しのポイントを変えた。硬いグリーンとピンの位置によって、グリーン周りが鍵を握ると確信した。
 時間も在原さんの味方をした。決勝ラウンドの2日間、2日目と比べてスタート時間が遅く、その分朝の作業が念入りにできるのだ。このインターバルを使って、ボランティアたちは徹底的にグリーン周り、バンカー周りのラフを起した。
 その読みは的中。次々に選手がその“罠”にはまった。1番ホールでのアプローチミスの続出。18番ホールではなんとバーディが0人と、在原流『日本オープンセッティング』はこの日、いよいよ本領を発揮したのである。 『(4パットの感想を)気合いを入れたら手が動かなかった』(尾崎直道)。『自分のスイングをさせてもらえなかった』(この日トータル31パットだった川原希)』といったように、各ショットにプレッシャーを受けた選手たちのコメントも控えめになった。

 ところが夕方、すべてが思惑通りにいった在原さんに思わぬ注文が入る。競技委員会から「これ以上硬くして、転圧をかければ芝が痛む。明日の朝の転圧はやめた方がいいんじゃないか」と。
 在原さんは拒んだ。「いいや、芝は大丈夫だ。転圧をかけても絶対に痛まない!」。毎日芝の根張りを観察、確認している、絶対の自信があった。そんな在原さんの熱意に、競技委員会もとうとう納得した。明日の朝は予定通り作業が行なわれることになった。


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