Championship Reports競技報告

念願のJGAタイトルを獲得した佐藤快斗の飛躍に期待

競技報告:Y.Koseki 写真:Y.Watanabe / S.Osawa

第3ラウンドを終えて、トップに立った佐藤快斗(東北福祉大学2年)。2位との差は6打の大差。しかも、今週はショット、特にアイアンの当たりが良く、タフなセッティングの横浜カントリークラブ・西コースを相手に3日間で喫したボギーはわずかに4個。さらに、佐藤は強豪・東北福祉大学ゴルフ部の代表メンバーとして、そしてJGAナショナルチームのメンバーとして、国際競技を含め、プレッシャーのかかる競技の経験が豊富だ。

当然、周囲は本命視。「もう佐藤快斗で決まり」という声が多かった。

しかし、本人は緊張から解放されることはなかったようだ。

佐藤が大差のリードにもプレッシャーから抜け出せなかったのは、もともと実力がありながら、これまで日本タイトルがかかった競技会では未勝利だったからだ。初のビッグタイトルが目の前なのだ。「これまで何回も、優勝を逃してきた、というか優勝に届かなくて、本当に悔しい思いをしてきました。一番悔しかったのは、高校3年の春の全国大会(全国高等学校ゴルフ選手権春季大会)で、最終日最終組で回って、終わってみたら2打差で負けたとき。そのとき初めて、『優勝できたのに届かなかった』と悔しい気持ちになりました。そのあと、同じ年の日本ジュニア選手権も最終日最終組だったんですが、今度は1打届かなくて、悔しくて。1ホール1ホール、気持ちの持ち方をしっかりしたほうがいいなぁと思いました」と振り返る佐藤快斗だが、「優勝を逃した」ではなく、「優勝に届かなかった」と言い直したところに彼のゴルフ、彼の勝負に対する真摯なスタンスを見る思いがする。敗戦のすべての原因は自分の未熟さにあるととらえているのだろう。

だから、「悔しい思いをするたびに、新しい課題をひとつひとつ克服しても、なかなか優勝に届かなかった」と語る彼の言葉がとても自然に聞こえた。

そして今回、佐藤は“大差のリードで迎える最終ラウンド”という、これまで経験したことのない立場に立ち、「勝利」を強く意識することになった。

最終ラウンドの競技が始まってみれば、一時トップに並ばれる展開について「こんな展開を予想していた?」との問いに、「はい。誰かしら伸ばしてくると思っていました。特に、昨日一緒の組だった(長﨑)大星はショットが本当に良くて、あとはパットが入れば、今日は来てもおかしくないと思っていました。でも、まさか前半で追いつかれるとは思わなかったですけど」と苦笑する。

佐藤は今年からJGAナショナルチームの指導で、競技期間中は毎晩、今日の振り返りと明日やるべきことをノートに書き出すようにしている。「大星がやっていることもあって、僕もやってみたんですけど、いい効果を感じています」という。昨夜、その「明日やるべきこと」をノートへの書き出しするなかで、緊張の解けない自分へのアドバイスをもらおうと母校の埼玉栄高校のゴルフ部コーチ(プロゴルファー)に電話を入れた。「これまでトップで最終日を迎えたことがなかったので、どういう心持ちで行ったらいいのか、話を聞こうと思って。(アドバイスを求めて、コーチに)電話したのは初めてです」

さらにもうひとり。ナショナルチームの菅生貴之メンタルコーチにも電話した。

結果、ふたりからは同じように「一打一打集中すること」という内容のアドバイスをもらい、そのことをノートに記した。

そして、床に就いたのだが……。トップを追う立場で迎えるときの前夜はいつもぐっすり眠られるのに、昨夜はなかなか熟睡できなかった。最終ラウンドのプレーを1番ホールから順番にイメージするうちに「15番ホールに来たら、そこでダブルボギーを打ってしまって(笑)。こりゃダメだ、って」と大笑いする。少し寝不足で迎えた第4ラウンドは、案の定というべきか、1組前で通算7アンダーパーからスタートした長﨑大星が2番ホールから怒涛の5連続バーディ。さらに、8番、9番でも連続バーディを奪い、前半を7アンダーパーの28で終え、通算14アンダーパーで折り返す。一方、13アンダーパースタートの佐藤は8番ホールまで3バーディ・1ボギーと手堅くゲームを進めたが、前半最後の9番でボギー。通算14アンダーパーで、バック9に入った。

佐藤はここからの7ホールが本当に苦しかったと、次のように語る。

「9番でボギーを打って並ばれた後の10番から、バーディを獲る17番の前の16番までは、バーディチャンスについたのにラインが難しくて打ち切れずにパーとしたホールと、グリーンを外したあとアプローチで1~2メートルにつけてしぶとくパーをセーブしたホールとが、交互に続いた感じで、苦しかったです」。そんななか、彼の脳裏にはこれまでの数々の“悔しい記憶”がよぎったという。

「でも、ここからずるずると行ったら、昔と変わらないぞ、という気持ちにもなりました」と、メンタルから建て直す。

佐藤は最近の自分の成長について、「全体的にひとつひとつのショットのレベルが上がってきました。でも、自分のなかでは、経験値の引き出しが増えたことです。特にメンタル面ではいろんな人の話を聞いて、強くなったかなと思います」と語る。

その強化されたメンタルのお陰もあるのだろう。佐藤は、終盤のしびれる場面で放った2本のアプローチショットを“今週のベストショット”に挙げる。「15番と16番で続けてグリーンの難しいショートサイドに外したんですが、15番はバンカーから、次の16番はやや打ち上げのグリーンに向かって」と佐藤。結果は、どちらもピンから1~2メートルの距離につけることができ、大事なパーセーブにつなげた。実は、この2本のショートアプローチは練習ラウンドのなかで重点的に取り組み、精度を上げていたという。

そして、続く17番ホールで再度、長﨑大星との差を2打に突き放すバーディを奪取。勝利を確実なものにし、そのまま逃げ切った。

「この優勝でやっと“勝ち切れた”っていう思いがあります。これからはもっと大きい試合でもこの優勝に自信を持って、プレーしていきたい」と語る佐藤。19歳の彼にとって「無冠」はやはり長くて、重い“くびき”だったに違いない。そこから解き放たれた今。次はどんな飛躍を見せるのだろう。

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