Championship Reports競技報告
Championship Reports競技報告

東本浩二(泉南)にとって、プレーオフ進出はまさに青天の霹靂だった。通算7オーバーパーでホールアウトした時点では、まだ後ろに4組が残っていただけに、自分よりも良いスコアで上がってくる選手がいると考えた。むしろ目標だったトップ10入りの可能性が大きいと思い、安堵しながら帰り支度をしていた。ところが、後続の組がスコアを伸ばせず、村上公俊(京覧)とのプレーオフになったと知らされたのだからたまらない。慌ててスタートの準備をすると、カートで1番ホール(パー4)へ。ティーショットを放ち、第2打地点でピンまでの残り距離を計測しようとした際、大変なことに気がついた。
「距離計の腕時計を外していたことを忘れていたんですよ」。帰り支度をした際に外したが、あわててロッカールームから飛び出してきたことで付け直すという考えが頭になかった。どうしたものかと思案していると、村上が声を掛けてきた。「私のレーザー距離計で計りましょう」。思わず東本の胸から熱いものが込み上げてきた。「こんな大きい試合でそこまでしてくれるとは思いませんよ。こんなにフェアな人がおるんやと」。しかも、村上は先に第2打を放ち、グリーンをとらえることができない状況だった。仮に逆の立場だったとしたら、東本も同じ行動をとっていたという。そんな自分と同じ考えを持つ人と戦っていることがたまらなく嬉しかったのだ。
ピンまでの距離は136ヤード。東本は9番アイアンを選択すると、その数字を信じてクラブを迷うことなく振り切る。すると、ボールはピン左2.5メートルにナイスオン。村上がアプローチを1.5メートルに寄せた後、しっかりとラインを読む。「自分はフックラインと読んだんですが、キャディがスライスラインだと言うんです」。どう見てもフックラインにしか見えなかったが、その言葉を信じて打つと、ボールはカップの中へ消えていった。東本が初めて日本タイトルを獲得した瞬間だった。
「村上さんのおかげで勝てたというのが第一です。こういう人がおったという事実を自分のゴルフ人生にプラスになるように、後輩とか周りの人に村上さんと同じようなことができるように、これからも自分を磨いていかなあかんなという気持ちでいっぱいです」。ちなみに、敗れた村上からは距離計の話は一切出てこなかった。
本選手権に出場したのは今回が3回目という東本。2024年10位タイ、2025年大会12位タイとこれまでは優勝争いに絡めなかったが、一気に頂点まで登り詰めた。ただ、タイトル獲得は最高の喜びだが、それ以上に今回は村上の心意気に触れたことが大きな収穫だったのは間違いない。

競技メニュー