写真:Y.Watanabe / Y.Kawatani
2025年の日本女子オープンゴルフ選手権は、チェリーヒルズカントリークラブにて開催され、堀琴音選手の優勝をもって盛況のうちに閉幕いたしました。競技運営を担ったレフェリーチームにとっても、特筆すべき大会となりました。
競技運営における裁定(ルーリング)の状況
本大会の4日間を通じた裁定件数は約90件に上りました。特筆すべきは第1ラウンドで、2名の選手がペナルティエリアからの救済処置を誤り、「誤所からのプレー」の重大な違反により失格となったことです。
また、コースセッティングにおいては、通常営業でアウトオブバウンズ(OB)と定める区域をインバウンズとしたことで、球が深い「ブッシュ(灌木帯)」に入り込むケースが多発しました。これにより、アンプレヤブルの救済を受ける選手が多く見られましたが、中にはブッシュからのプレーを断念し、「ストロークと距離」の処置を選択した選手もいました。
日本の一般的なゴルフコースでは、林やブッシュ、崖などプレー不能な区域をOBに設定することが多いため、アンプレヤブルの裁定が多発することは稀です。しかし、全英オープンなどでは、アンプレヤブルの裁定が一日の中のルーリングで最も多くなることも珍しくありません。プレー不能な区域をOBとしないセッティングに対しては様々な意見があるかと思いますが、我々のセッティングの根幹にあるのは、コース内である限り、可能な限り罰なしで「あるがままにプレーできる権利」を保障したいという考え方です。このセッティングにより、多くの選手が罰則を受けずにプレーを続行できたことも事実です。
規則に対する選手の高い意識と協力
今大会では14名のレフェリーが配置されましたが、選手からコースセッティングや競技運営に対する不満・批判の報告は皆無でした。これは、選手たちがゴルフ規則を深く理解し、正確に適用し、必要であれば自ら罰を課すというゴルフの精神を見事に体現していた証明と言えるでしょう。
救済を受けた場所が必ずしも容易にプレーできる状況であるとは限らず、「あるがままにプレーする」という原則に基づき、困難な状況に挑んだ選手も多くいました。また、日没が懸念される中、多くの組がレフェリーからプレーペースの促進を要請されたり、計測対象とされましたが、選手たちは極めて協力的でした。さらに、第3・4ラウンドは降雨に見舞われましたが、プリファードライのローカルルールは採用されませんでした。この決定に対しても、選手からの不満や抗議は一切ありませんでした。
「ゲームの精神」の核心
特にゲームの精神が示されたのは、第1ラウンドで失格となった選手が、自らの処置の誤りの可能性を、自発的に委員会へ連絡してきたことです。これは、プレーヤーが自らの行動に全責任を負い、自己申告を行うという、このゲームの精神の最も重要な側面です。
失格となった選手は、自ら誤りを報告し、規則に基づく罰を受け入れ、私たちに感謝の意を伝えてコースを去りました。プレーヤーたちはゴルファーとしての最高の品格を示したと言っていいでしょう。失格という罰は、決して不名誉なものではありません。ストローク数で調整しきれない重大な規則違反に対し、競技から離脱する唯一の手段として適用されるに過ぎません。
プレーヤーが自ら規則を適用し責任を負うゴルフという競技において、レフェリーはあくまでプレーヤーを援助する立場です。規則がもたらすあらゆる困難を受け入れなければならないのはプレーヤー自身なのです。
今年のナショナルオープンは、誠実にプレーしてくださった選手たちの高い倫理観によって、今年もまた素晴らしい大会となりました。
=JGAゴルフルールYouTube=
(公財)日本ゴルフ協会の公式ゴルフルール解説動画
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