Japan Women’s Open Golf Championship 2026日本女子オープンゴルフ選手権
10月1日(木) 〜 10月4日(日)
宝塚ゴルフ倶楽部 旧コース
競技メニュー

世界で60勝以上を挙げている申ジエにとっても初めて経験する感情だった。
桑木志帆との3ホールに及ぶプレーオフを制して日没迫る雨の宝塚ゴルフ倶楽部で歓喜の瞬間を迎えた申ジエ。本選手権初戴冠と共に公式戦4勝、さらにツアー通算30勝を達成して永久シードを獲得する偉業を達成した。
宝塚ゴルフ倶楽部開場100周年を記念する大会に相応しい激闘が繰り広げられた。
首位の桑木とは2打差の2位からスタートした申だが終始気迫が溢れていた。
先手を打ったのは申。2番ホールのパー3でピン手前2メートルほどにつける。桑木も負けじとその内側につけてきたが、先に申が沈めた。続く3番ホールでボギーを叩いてしまい3打差になるが、すぐさま4番ホールでバーディを奪いバウンスバック。彼我の差を2スロトークに戻す。
4日間を通して最終ラウンドにして初めての雨でコンディションの変化への対応力が求められたが、そこは経験豊富な申と今年のポイントランキングトップを走る桑木なだけあって一歩も引かない戦いが展開された。前半は桑木がスタート時よりも1ストローク差を広げて折り返すことになる。流れは桑木に傾き始めているようにも思えたが、申が諦めることはなかった。
「私にとって日本女子オープンは獲りたい試合でした。難しいコースではコースマネジメントが大事だと思っているし、そう言うコースは私に有利と思っていました。また、雨も私にとってはいいと思っていました。コンディションが良いとスコアを出してくる選手がいる可能性もありますが、難しくなればなるほど桑木さんとの戦いになるだろうとも考えていました」
申は桑木のことを間違いなく今最も強い選手だと認めている。その桑木と最終ラウンド最終組でプレーすることで、今の自分の最大の力を引き出せると考えていた。そのために3日目を戦ったとも話していた。

申の予想通り、バックナインはまさに一騎打ちと言っていい展開となった。逃げる桑木に追いかける申。ただ、徐々に申は主導権を握り始める。
桑木がこの日初めてのボギーを 11番ホールで叩く。続く12番ホールですぐさまバーディを奪い返すが、流れが変化したのは13番ホールだった。申は2オンしたもののバーディパットは16メートルほどを残していた。それをど真ん中から沈めて拳を天に突き上げた。
「ラインはしっかり見えていました。でも入る確率が高い距離ではない。ただ、良いチャンスが来たとは感じました。最終ラウンドは距離感も良かったのでそれを信じて打とうと。入ったときは正直驚きましたけど」
勢いに乗った申は続く14番ホールのパー5でも3打目を1.5メートルほどにつけて連続バーディ。桑木との差を1ストロークまで詰めた。一転して15番、16番は連続してピンチを迎える。15番はセカンドショットをグリーン右手前に外し、16番ホールもセカンドショットを右にミスしてバンカー。ただ、この2ホールでスーパーセーブを披露する。申にとっては最終ラウンドの勝負所でのリカバリーは「スーパー」でもなんでもないのかもしれないが、驚異的に見える粘りは桑木の心に僅かずつプレッシャーを与えていたのかもしれない。
そしてピンチを乗り越えて迎えた17番ホールで会心のバーディを奪取。いよいよ桑木を捉えた。
最終ホールはお互いにパーとして勝負の行方はプレーオフへと持ち越される。
18番ホールの繰り返しで行われたプレーオフは1ホール目、2ホール目とお互い譲らずのパーで引き分け。迎えた3ホール目はティーマークが前に出されて、ホールロケーションもセンターに切り直された。共にティーショットはフェアウェイをキープ。セカンドショットは桑木がピン左約4メートル。申はピン右にこれも4メートルほど。日没が迫る中、最初に打った桑木がわずかにショートしてパー。正規のラウンドの18ホールを含めてプレーオフでも惜しいパッティングを繰り返してきた桑木だが、決めきれないフラストレーションが最後の最後で影響したのかもしれない。
そして迎えた申のウィンニングパット。
「桑木選手は強い選手です。バーディでなければ勝負はつかないと思っていましたし、私自身もバーディで終わりたい気持ちがありました。プレーオフに入ってからパーセーブを続けて初めてきたチャンスでした。『入る、入る』と自分で言葉にしながら打ちました」
ボールがカップに吸い込まれた瞬間、申は両手を突き上げ大きく体をのけ反らせた。ここまで感情を露わにする申は珍しい。

永久シード獲得となる国内女子ツアー通算30勝目。そして最も獲りたかった本選手権のタイトルをやっとの思いで手にできた思いが一気に溢れた。
これだけの勝ちを重ねてきた申だが、優勝して涙を流したのは初めてだ。
「私は嬉しくて泣くという感覚がわからなかったんですけど、今回の優勝でそれを知りました」
申は本選手権で2017年と2022年に2位に入っており、自身も自分に合っている大会という自負があったが、それでもなかなか手が届かなかった。年々高くなる女子ツアーのレベルや、自身の年齢も含めてチャンスが少なくなっていることは実感していた。だからこそ今回はなんとしてでも勝ちたい思いが強かった。高いコースマネジメント力が要求される本選手権のセッティングに加えて、今回の宝塚ゴルフ倶楽部旧コースのパー3が6つあるという特徴からも「ここしかない」という思いがあったのではないだろうか。
偉業を達成した申が最後に口にした言葉が「感謝だ」。
「この大雨の中、プレッシャーの中で私の中でも勝つことは難しいと思っていました。でもそんな中でも自分が自分に負けないようにすることだけは忘れませんでした。ここで戦えていることに感謝し、その感謝の気持ちが厳しい戦いを乗り越えさせてくれたのかもしれません。これからもゴルフがたくさんできることが嬉しいです」
永久シード権を獲得した喜びを話す申の嬉しそうな笑顔はゴルフを始めた11歳の頃から変わっていないのかもしれない。