Japan Senior Open Golf Championship 2025日本シニアオープンゴルフ選手権
9月18日(木) 〜 9月21日(日)
相模原ゴルフクラブ 東コース
競技メニュー
競技報告:Y.Koseki 写真:Y.Watanabe / K.Aida
昨夜来の雨は明け方にはすっかり上がり、相模原ゴルフクラブの上空は早朝からきれいな青空が広がった。しかし、それは選手たちにはより硬く、より速いグリーンを提供することになる。しかも、この日のピン位置(ホールロケーション)は全選手の平均ストロークがアンダーパーの71.657、つまり多くの選手がアンダーパーで回った第3ラウンドからは一変。4日間で最もタフなロケーションにセットされ、同平均ストロークは74.179。前日と比べ2打以上も多く要することになった。
2位に1打差、通算14アンダーパーの首位で最終ラウンドを迎えたタマヌーン・スリロット(タイ、56歳)。NHK BSのテレビ中継の解説席に座った青木功をして、「上手いねぇ」と何度かうならせたパッティングの名手だが、その彼にしても決して楽な舞台ではなかったはず。実際、試合後に「いつも以上に緊張していた」と明かしたスリロットは、スタートのティーショットを左に曲げてラフに入れ、結果、ボギーとしてしまう。「勝ちたい試合だった」とこのタイトルに掛ける熱い思いがショットの感覚を狂わせたのだろう。
今回、スリロットがキャディに伴ったのは21歳の子息ボス(Boss)さん。本来なら気持ちを和らげてくれるはずだが、「息子は緊張していないと言っていたけど、見るからに緊張していました」と笑う。
救いはペアリング。前日に続き、母国の先輩で本選手権4度制覇のプラヤド・マークセンが同伴プレーヤーだった。タイでは試合のたびに二人で優勝争いを演じる気心の知れた仲で、この日も次第にリラックスできた、という。そのためもあって、その後はショットが安定。前半は6番、9番でバーディ。後半は11番のバーディで、通算16アンダーパーまで伸ばした。ところが、続く12番でダブルボギー。ゲームは一気に風雲急を告げる展開になった。
そして、迎えた15番(パー4)。フェアウェイからの第2打がハーフシャンク。ボールはグリーン右のサブグリーンのさらに右のガードバンカーに入ってしまう。
誰もが優勝争いはさらに混とんとすると予想した。ただし、スリロット本人を除いて。
実は、スリロットは練習ラウンドでそのバンカーからのアプローチを前もって練習しており、寄せることに不安はなかったというのだ。結果、第3打を3メートルほどにつけると、強めに放ったパーパットは見事、カップの正面からホールに沈んだ。
終わってみれば、このパーパットが勝利を決定づけた。後半は12番のダブルボギーのあとはすべてパーをキープ。この日はパープレーの72。2位以下に2打差をつけ、2023年の日本プロシニアに続くメジャー2勝目(シニアツアーも同じく2勝目)を手繰り寄せた。
丸2年優勝から遠ざかったのは、より安定した球筋を求め、時間がかかってもという覚悟でスウィング改造を敢行したから。結果、ドローの球筋の精度は増し、ドライバーの飛距離は「自分でもビックリ」という20ヤードも伸びたと、大きなジェスチャーを交えながら嬉しそうに語った。
この優勝により来月に日光カンツリー倶楽部で開催される日本オープンゴルフ選手権の出場権を獲得。「自分のゴルフが日本のレギュラーツアーでどれだけ通用するのか楽しみ」と全力で戦う気満々だ。
そして、ホームツアーの国内シニアツアーでは「今季はあと2勝はしたいですし、その自信があります」と、やはり笑顔できっぱりと宣言した。