10月16日(木) 〜 10月19日(日)
日光カンツリー倶楽部
競技メニュー
競技報告:Y.Koseki 写真:Y.Watanabe / S.Osawa
「良くも悪くもあの試合で名前を知ってもらったことは確かで、それはすごく嬉しいことだと思っています。その反面でいろんな人から勝てなかったことを今でも言われることがあるんです。もちろん、それだけの人が観てくれていたということですが、やっぱり辛かったですし、言われれば言われるほど苦しかったですね」
これは今年の日本女子オープンゴルフ選手権に勝った堀琴音がその表彰式で語った優勝スピーチである。堀は、2016年の日本女子オープンで、当時17歳の高校3年生、畑岡奈紗に土壇場で逆転され、勝利をさらわれた。そのエピソードはゴルフファンの間で衝撃的・歴史的出来事として機会あるごとに話題にされてきた。
そうした扱いについて「すごく嬉しいことだと思っています」と笑顔でスピーチできるまでに、堀は9年もの時間を要した。
さて、今大会の最終ラウンド、2位以下に一時は6打あった差を逆転され、勝利を奪われた清水大成(26歳)はこの敗戦をどのように語るのだろう。我々メディアはアテストを終えた清水に会見を求めたが、最初は「今はとても話す気になれない」と拒否された。しかし、大会をライブ中継するNHKテレビに登場後、再度要請すると、一度同テレビのインタビューに答え、頭を整理できたからだろう。我々が求める会見の場に現れた。
そのときの清水の視線はうつむき加減でも、虚空を見つめるわけでもなかった。ただし、我々とは目線を合わせず、少し上向き加減。それでもこちらの質問に真摯に答えようとする姿が印象的だった。
――今日はどんなラウンドでした?
「そうですね。自分的にはナイスショットしたのが、ちょっとラフに入ったりと、微妙に嚙み合わなくって、それが最後まで修正できずに上り3ホール?4ホール?5ホール? ちょっと酷いゴルフだったなと思います」
――11番ホールのチップインで流れを引き寄せたかと思いました。
「僕もあれはいいバーディだったと思ったんですけど。まぁ、何というか……」(と、これに続く言葉は出てこなかった)
――いつもと違う精神状態だったんですか?
「いや、今日は、そんなに緊張しすぎずにできていたんですけど……。(ふーっと深いため息をついたあと)わからないですね」
しかし、その清水もいずれは冒頭の堀琴音のように、屈辱的な負けを自分なりに消化、血肉化し、意味ある言葉にする日が来るはずだ。それが日本オープンを舞台に、できるだけ早く来ることを願う。