10月16日(木) 〜 10月19日(日)
日光カンツリー倶楽部
競技メニュー
競技報告:M.Ideshima 写真:Y.Watanabe / S.Osawa
「全プロゴルファーが憧れているタイトルに名前を刻むことができて本当に光栄です」。
首位とは7打差の6位タイからスタートした片岡尚之。トップを走っていた清水大成の状態の良さも加味して優勝への意識は全く持っていなかった。
心がけたのは自分がやるべきことをやり切るだけ。1ストロークでも良いスコアで上がることだけを考えていた。
その結果、4バーディ・2ボギーの2アンダーパーの68でラウンド。通算3アンダーパーで自分でも予想していなかったプレーオフに加わることになった。
原敏之と行われたプレーオフは1ホール目でボギーとした原に対して片岡はしっかりパーをもぎ取り激戦に決着をつけた。
4日間通してオーバーパーを打たなかったのは出場選手中、片岡ただひとり。まさに本選手権を勝つための条件を全て満たして手にした勝利だったと言える。
優勝の瞬間、涙を堪えることができなかった。
ツアー通算2勝目をメジャータイトルで飾ることになった片岡だが、ツアー初優勝は2021年の『JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP byサトウ食品』。ツアー出場わずか4試合目での優勝だった。
ただ、それから4年間勝つことはできなかった。そんなに時間がかからず2勝目を挙げることができるだろうと片岡だけでなく、周囲の人間も思っていた。しかし優勝争いをしてもなかなか勝つことができない。2位が7回もあり、シルバーコレクターと呼ばれることもあった。負け癖がついてしまったのかもと思うようになり、ゴルフに向いていないのではとまで落ち込む時期もあった。
ただ、そんな状況でも片岡は諦めなかった。長く指導を受けている谷将貴コーチや、谷コーチとの関係から親交を深めた片山晋呉ら多くの人の支えにより、どんなに辛くても努力することをやめなかった。特に妻と今年2月に誕生した子どもの存在は大きく、家族の支えが精神面で大きなプラス材料となっていることは間違いない。10月20日はお二人の結婚記念日。感謝の気持ちを伝えるための最高のプレゼントになったことだろう。
今回の優勝でマスターズと全英オープンへの出場資格を得た。海外メジャーへ出場すること自体が初めての経験。楽しみでありながら、不安ももちろんある。
「出場する選手の中で間違いなく自分が技術的にも一番下手なので、来年までに戦えるように準備したいと思います」。
本選手権を獲ったからと言って片岡に慢心はない。まだまだ未熟。そう思い続けることが更なる進化を促す。海外という新たなステージに向けて、今回の優勝が片岡の本当のスタートを切るきっかけになるだろう。